当院でもよくお問い合わせいただく、埋伏過剰歯。
昨年末の冬休みに入ってしばらくした頃、8歳の男の子の埋伏過剰歯を2本抜歯することになりました。
もともと矯正医からご依頼だったのですが、当院で抜歯をするということは(当然全身麻酔はできないわけですから)、トレーニング後に意識下で抜歯をすることを意味します。
とはいえ、8歳という年齢は本人によほどトラウマがない限り、トレーニングに問題なければ普通に抜歯できる年齢になります。
意識下で抜歯できるかどうかは、年齢よりも信頼関係を築けるかどうかにかかっていると考えていますが、今回の場合はさらに面識のあるお子様だったので、正直トレーニングも初回の段階で問題なく抜歯できる感覚は掴めていたと言っていいと思います。
それでも年末になったのは、単に学校の兼ね合いからで、基本的にお子様の埋伏過剰歯の抜歯は夏休みや冬休みに集中しやすいのです。
簡単に抜歯の術式をご紹介しておきます。
図の緑のラインに沿って切開をし、剥離(はくり:めくること)してゆきます。
とはいうものの、実は手術時間の半分近くは麻酔で消費してしまいますから、この時点で20分ぐらいは経過しています。
麻酔で一瞬でも痛いと思わせてしまったら最後、その後の手術の難易度は跳ね上がると言っていいからです。
今回の場合、乳前歯が1つグラグラだったので、手術に耐えられないと判断し切開前に抜歯をしています。
歯科用のタービンやマイクロモーターなどの切削器具を用いて、CTの画像を頼りに骨を削って埋まっている歯を露出させてゆきます。歯を露出させる過程が窓を開けるようだから(だと思うのですが…)開窓と呼びます。
剥離した粘膜の下にはすでに永久歯が見えていますね。今回の場合、中央に小さく過剰歯が1つ頭をだしている状態でした。
※ この部分は動画がわかりやすかったので、合わせて貼っておきますが、出血ある痛々しいと思いますので、苦手な方は▶️を押さないように。
ヘーベル(挺子:ていし)と呼ばれる、ちまきのような形をした金属製の器具を使い、テコの原理を応用して抜歯をします。
一気に豪快に骨を削れば、すぐに抜歯できるのですが、ダメージを抑えるのも手術においては大事な要件になりますので、ヘーベルをかけては骨を削り…またヘーベルをかけて骨を削りの繰り返しになりがちです。
駆け出しのころはこれで時間をとられて”手術時間が長くなるあるある”ですね。
これも経験を重ねると切り替えのタイミングが早くなり、手術時間は短くなっていきます。
※ 出血ある痛々しいと思いますので、苦手な方は▶️を押さないように。
今回は想定していたよりも骨を削る量が増えてしまったものの、予定通りに抜歯が終了。
意識下での手術ですから、当然手術中は普通に会話できるのですが、特に問題もなくトレーニング通りでした。
縫合した後は、プラスチック製の薄いプロテクターを装着しますので、術後に腫れや痛みがでることもほとんどありません。
終わった後はポケモンカードをご褒美に買ってもらうそうで、手術が終わってホッとしたのももちろんですが、嬉しそうに帰っていった姿が印象的でした。
切開してしまうと途中で中止というワケにはいかないので、それなりにプレッシャーがあり、終われば安堵感があります。
本人はもちろん、すぐ側で手術を見届けたお母様・スタッフ、みんなで頑張った結果だと思います!
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口腔外科で病院勤務後、ベテラン歯科医師の元で研鑽を積み、歯科医院の分院長を経験。現在は名東区で歯科医院を開業しています。
診断力と器用さを武器に、オールラウンド型歯医者を目指して奮闘中。