先月はいつもより、咬み合わせの症状で初めて来院された患者さんが多かったように思います。
そのうちの1つの症例を通じて、実際の診断までの流れをご紹介しようと思います。
【症例①】左上の奥歯の違和感 |
今年の春ごろ左上の奥に違和感を感じ、かかりつけの歯科医院受診したところ、同部の歯茎の腫れと膿を指摘され、歯を抜いた。 歯を抜いてからは同じ箇所に違和感を感じるようになったが、 「歯を抜いたことで、周りの歯に負担がかかっているからでしょう。ブリッジ型の被せ物をすれば解消すると思います」 と担当医から説明された。 その後、被せ物をしたものの違和感は解消されず、2ヶ月経った今でも症状は変わらずあるとのことで、咬み合わせの診断を希望され当院受診される。 |
お口の中を診察させていただいたところ、抜いたところの後ろの歯の歯茎に小さな腫れと膿が認められました。
(患者さんはこの歯茎の腫れが症状の原因ではないか?と疑っておられるようでした)
診察した時の所見をまとめると次のよう…
① むし歯や歯周病などはなし ② 左上の奥歯の歯茎に米粒状の腫れと膿がある ③ 左側の首や顎の筋肉に張りと痛みがある ④ 左の奥のブリッジ型の被せモノが他の歯より、明らかにあたりが弱い |
普通は、まず歯の根の治療から始まると思います。
ただ、前の歯医者さんは歯の根の治療を専攻されていたベテランの先生だそうで、レントゲン上も治療に問題があるとは思えません。にもかかわらず治療後半年で症状が出てきているのであれば、別の要因を疑うべきだと思うのです。
それに、歯茎の腫れは手前の歯を抜いてからできていることから、抜いた後の治療の影響と考えるのが自然だと思うワケです。
一方で、③の所見は左側で強く咬む必要がある状態を示し、④の所見は咬み合わせが低い状態を示しています。このことから仮説を立てます。
左側の咬み合わせが低く、左側の筋肉を強く収縮させないと歯があたらない状態 |
この状態は、普通に歯と歯を咬み合わせてるだけで、左の歯には負担がかかり、違和感〜痛みまで様々な症状が現れます。
いわゆる咬み合わせによる症状です。
ここまでが当日の仮診断です。
仮の診断ですから、これを証明して患者さんに納得してもらう必要があるワケで、この患者さんの場合は、翌週に咬み合わせの低くなっている左奥の被せモノの表面に樹脂を盛り上げました。
とりあえず高さを戻してみたのです。仮診断があっていれば、症状は軽減するハズ…。
さて結果はどうでしょう?
その次の来院で 「それまでの症状を10段階の10とすると、今は4ぐらいに減ってます!」 とのコト…。 ひとまず方向性が合っているのを患者さんも実感されたのでは?と思うのです。 その後は具体的に左上をどうしてゆくかは、患者さんと相談しながら決めてゆくことになっています。 |
追記(12月24日) |
現状、当初の20%ぐらいまで減って、満足されている様子。定期検診でクリーニングをしながら、今後はゆっくり考えられるそうです。
歯科ではいろんな症状があります。
ムシ歯や歯周病のように、すべてが目に見えるわかりやすい症例とは限りません。
そんな時は憶測では治療を進めるワケにはいきません…
仮診断をたて、証明し、診断を信頼できるようにする
このことをケーコ歯科では大事にしているつもりです。