さて、突然ですが口を閉じている時、ベロはどういう状態になっているのでしょうか?
実はお口を閉じた状態が続くと、口の中は空気がなくなってゆき、真空のような状態になります。 するとベロや頬の粘膜は歯に吸い寄せられるように密着した状態になり、ベロや頬に歯形がつくと…。 なにもこれは”食いしばっている”ということではありません。上下の歯と歯が接触している状態が続くだけでも、この状態になってしまうのがポイントです。 |
これを踏まえて、実際の症例を見てみましょう。
今年の3月ごろから、舌の痛みでお通いいただいている40代の女性。
ようはかかりつけの歯医者さんでは、舌にあたっているであろう歯のトガッた部分を削って丸め、あとはマウスピースの装着で経過をみていた…ということになります。この時点で4ヶ月続いていることになりますね。
個人的ですが、舌の症状改善で絶対にやらないようにしているのが、この歯を削って丸めるという行為です。 3日ぐらいは良くなるのカモですけど、結局前と同じか下手するとヒドくなる場合があるからです。 患者さんから直接お願いされることすらありますが、基本的にお断りしています。 |
じゃぁ、何をするのか…?
ベロに歯が当たって症状があるのなら、内側から診ることから始めないなんとも言えないので、まずは模型をつくって状況把握です。
最初は特に症状が強い右側を基準に治療してゆきます。
咬んでも下の歯の内側がベロにあたってしまうような咬み合わせになっているようです。ただこれは症状がでる前からだと思われるので、この咬み合わせそのものが原因ではないと考えるべきでしょう。
写真ではわかりませんが、削られたあともありました。
ここで仮説をたてます
もともと症状がでる前はもう少し歯の凹凸があり、ベロが隙間に入るのを抑制していたが、歯を削ることでより隙間に入り込むようになり、逆にベロが刺激されるようになった。 |
この仮説が正しいとすると歯の隙間を埋めるようなマウスピースを日中装着していれば、症状は軽減するはず。検証してみましょう。幸い、前の歯医者さんでマウスピースを作成されていたので、それを利用して改修してみました。
さて、マウスピースをして1週間経過してみると…
…と、立証とまではいかないまでも、方向性はよさそうですよね。
患者さんも希望されたので、今度は歯の形をもとの形に少しだけ戻してみることとしました。
樹脂をつかって、削られていた部分に盛り足して、削る前の歯の形をイメージして戻してみます。
この状態から…
この状態に…
どこが変わったのかわからないですよね?
でも、ベロ側にほんの少しだけ樹脂を盛り足し、研磨しています。これはダイレクトボンディングと呼ばれるテクニックを応用したものですね。
よくなっていますね。
初診から1ヶ月。患者さんの表情も明るくなっています。
この後、患者さんと相談し、さらに盛り足しています。
…やっぱりよくわからないですよね。
正直、やった私自身もも写真だけではどこに盛り足したのかすぐにはわからりません。
言い換えればそれだけ微妙な変化でベロの症状は起こりうる…ということです。
初診から1ヶ月半ぐらい。症状はほぼ消失してなおかつ安定しているようです。
治療はまだ終わりではありませんが、ひとまず一段落といったところでしょうか。
舌の症状でお悩みの方、当院でもしばしばお問合せいただきます。 そのほとんどが通っている歯医者さんで治療していてもほとんどよくならない、もしくはいろんな歯医者で相談して治療してもよくならない…そんな相談です。 …なぜなんでしょう? 答えは簡単、大学で学べないし、学ぶ場所もないから…。 その結果、治療をする歯医者は少なく、治療方法も確立できず、保険点数も整備されない…。 結局はキーとなるのは患者さんの話を信じるかどうか。それだけだなんじゃないかと思います。 |
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👅ベロが歯に当たって痛いから削ってほしい💧
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■ 書いた人:ケーコ歯科 歯科医師 塚本
口腔外科で病院勤務後、ベテラン歯科医師の元で研鑽を積み、歯科医院の分院長を経験。現在は名東区で歯科医院を開業しています。
診断力と器用さを武器に、オールラウンド型歯医者を目指して奮闘中。