…との訴えで急患で来院された男性のお話。
左の上下に入れ歯が入ってはいたものの、歯には自信があったそうでなんの苦労もなく過ごしてきたそうなんですが…。なんでも1ヶ月ほど前に右の上に保険のブリッジ*を入れからというもの、いろいろな症状が出て困ってらっしゃいました。
最初の診療メモにもその時の苦悩が感じられます。
さて実際のお口の中は…
一見なんの問題もなさそうで、むしろ歯がキッチリ咬み合っているようにさえ見えます。
でも色々診てみているうちに、咬み合う直前に引っかかっているような印象を受けました…。
スローモーションのようにゆっくり咬んでもらったところ、咬むと左下の糸切り歯が最初にあたり、それから顎が右にスライドするようにズレ、ようやく全部の歯があたる咬み合わせになっていました。
…ここで仮診断をたてます。 「咬み合わせがおかしくなったのは、右のブリッジが低かったから」 患者さんの「ブリッジをいれてからオカシくなった」というターニングポイントがあるので、そこを起点に考えるワケです。 |
この仮説を患者さんにお話したトコロ、納得され治療を希望されましたが、仮診断はあくまで仮診断で確定ではありません。ここでまったく違っていたら、悪い方向にすすむコトもあるでしょう。
まずは仮診断を立証するため、右側の咬み合わせを試しに上げてみるのを提案します。
右の奥歯にはすでに保険のブリッジが入ってますから、疑似的に高さをあげるため、表面処理をして樹脂を貼り付けてみます。
仮診断が間違っていた場合でも、はずせば元に戻せるので安心ですよね。
この処置により、左下の糸切り歯と右の奥歯が同時に接触するようになりました。
ひとまず咬み合わせは安定したようです。
さらにこの左側の入れ歯も同じ高さになるように、盛り足して修正し、入れ歯もふくめて奥歯がすべて同時に接触するようになったことになります。
前歯に隙間がありますが、これは前後的な咬み合わせの変化によるものと思われるので、しばらくして再調整の必要がありそうです。
さてその1週間後の経過は?といえば…
1ヶ月の悩みだったのが、1週間で解消されたのは喜ばしいコト。
この経過により、仮診断が証明されたことになるワケです。患者さんも安心して本格的な治療を希望できると思います。
ただ今回の治療については1つ課題が残っています。保険の被せ物を装着したのが1ヶ月前なので、2年間は保険での再治療はできません…💧。
右の上の被せ物をやり直そうとすると、自費治療になってしまうので、どうやって費用を抑えるかを今後は患者さんと相談です。
最後に、よい被せ物よい入れ歯とは材質が良いモノではないのです。 材質はもちろん、作る工程以前の診断の段階でよく診て、問題点をキチンと補ってあること。それが保険の材料では難しかった時、補えるのが自費の材料なのです。 今回のケースではこのことに気づかないままブリッジや入れ歯を作り直してもよくはならなかったカモ知れませんよね。 |
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■ 書いた人:ケーコ歯科 歯科医師 塚本
口腔外科で病院勤務後、ベテラン歯科医師の元で研鑽を積み、歯科医院の分院長を経験。現在は名東区で歯科医院を開業しています。
診断力と器用さを武器に、オールラウンド型歯医者を目指して奮闘中。