「左下の前歯に軽い痛みが続いている。」
とのことで来院された女性。
聞けば、去年の秋からかれこれ10ヶ月近くになる症状とのこと。かかりつけの歯医者さんでもレントゲンを撮って調べてもらったりしていたそうですが…
「ムシ歯じゃないよ。気にしすぎじゃないの?」
と言われて様子見になっていたとのコト…。
…歯医者さんでは…まァ、よくある話ではあります。
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で、お口の中をチェックしたのですが…。 なるほど、パッと見大きなムシ歯があるようには見えません。 前の歯医者さんが問題ないと言っていたのも納得です。 (ただ、よく見ると詰め物の下の方に黒い影になっているトコロがあります。) |
さて、症状がある場合、必ず何かあるモノ。
痛みという体のサインが出ている以上、気のせいなどでは絶対にないハズ…
…とはいえ、経験上こういったケースではムシ歯の可能性は低かったりします。
前の歯医者さんもムシ歯を最初に疑うワケで、その上でレントゲンで否定している事実があるので、実際は咬み合わせが関与しているケースが大部分だったりします。
まァ、一応レントゲンを撮ってみたのですが、1つ気になる所見が…
問題の歯の真ん中あたりに、丸い影が見えなくもないのです。 (もしかして本当にムシ歯では???) でももしムシ歯だとしても、これはもう歯茎の中で、外側から診査できない位置のハズ…💧 |
基本的にレントゲンなんて所見の1つでしかなく、確定診断ができるものではありません。
でも、この影はムシ歯の可能性を疑って次の検査を考えるべきでしょう。
…問題は歯茎をめくって直接見てみないことには確定診断が得られず、治療方針も立てにくいということ。
今回のケースでは、初診で初対面にもかかわらず、患者さんは信頼して同意してくれたのです。
切開してみると、歯茎の下にはやはり穴が空いたようなくぼみがあります…。 さらにそこに器具を入れてみると、ズブズブと入って行ってしまいます。 にらんだ通り、痛みの正体は歯茎の下のムシ歯がだったのです。 |
残念ながら、この位置でこの大きさのムシ歯は、神経を抜いて処置するのが妥当だと判断。
この後、神経の処置をしてこの日は終了となりました。
このように治療とは診断の裏付けが必要で、初見でわからない時には仮診断をたててから立証して患者さんに納得してもらうという行程が大事だと思うのです。
すべての治療がスムーズにいくとは限らず、いい時もあれば悪い時もあるでしょう。その時に患者さんが不安にならないためには、経験だけに頼った診断ではなく
仮診断→立証→確定診断
という流れが必要だということです。
■ 書いた人:ケーコ歯科 歯科医師 塚本 口腔外科で病院勤務後、ベテラン歯科医師の元で研鑽を積み、歯科医院の分院長を経験。現在は名東区で歯科医院を開業しています。 診断力と器用さを武器に、オールラウンド型歯医者を目指して奮闘中。 |